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義歯と転倒との意外な関係について

そもそもなぜ, 高齢者は転倒しやすいのか?

高齢者の転倒のリスク要因は, 加齢変化, 疾病に伴う障害や服用薬剤の影響など, 身体機能の低下に関連した「内的要因」と生活環境に関連した「外的要因に分けられます。そして, 高齢者の転倒の多くは, 滑りやすい床で転倒するなど, 生活環境に起因した突然の姿勢の乱れに対して.姿勢の制御ができなかったこと,により発生します.すなわち, 加齢変化による筋力, 反応速度ならびに平衡機能が低下していることが高齢者の転倒の大きな要因といえます。さらに, 転倒を経験した高齢者は必ず再転倒を起こすとの報告から, 転倒自体が再度の強力なリスク要因と考えられます。

義歯と転倒の関係

日本スポーツ歯科医学会は, 咬合支持の喪失(義歯装着の有無)と転倒に関する文献的な知見を2015年に報告しましたの.いくつか論の要約を紹介します。

•19歯又下で義歯未使用の者は20歯以上の者に比較して, 転倒リスクが2.5倍高くなる.ただし, 19歯以下であっても義歯使用の者では, 20歯以上の者の転倒リスクとの間に差を認めなかった。

•義歯の装着により, 身体動揺や歩行が安定することから咬合支持の回復が平衡機能に影響を与えることが示竣された.

•義歯治療による咀爵能力の改善が, 平衡樓能を改善することが示唆された.

•咬合が不意な姿努の乱れに対しての平衡機能に寄与しており, 転倒回避能力を含むバランス能力に影響することが示唆された.

今後, さらなる科学的な根拠の蓄積は必要ですがこれら多くの報告から, 義歯装着による咬合支持の回復が, 高齢者の平衡樓能など運動機能の改善に寄与し, 転倒リスクを軽減できる可能性が示唆されています.

これまで日本歯科医師会は, 「口腔機能管理により誤晒性肺炎が激減する」ことや, 「全身の手術の前後で口腔機能管理を徹底すると, 入院日数が少なくなる」といったデータを示し,「口腔の健康は全身の健康にもつながる」ことを広く発信してきました.これらのデータをもとに, 昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針2017)において, 「口腔の健康は全身の健康にもつながることから, 生涯を通じた歯科健診の充実,入院患者や要介護者に対する口腔機能管理の推進など歯科保健医療の充実に取り組む」と明記されたことは, 歯科医療に対する国民の理解と期待が高まったことのあらわれでもあります.

今後, 義歯装着による咬合支持の回復が, 高齢者の転倒リスクを軽減できることについて, さらに科学的な根拠を蓄積し, 国民に向けて発信していく必要があります.

転倒対策

高齢者が多くの歯を健康に保つことで, 歯の喪失から高まる転倒リスクを軽減させることができます.予防に勝る医療はありません.歯科衛生士が実施できる口腔ケアは.長期的には高齢者の歯の喪失を予防することに寄与できるため, たいへん重要となります.また, 「歯や義歯による収み合わせの回復が, 転倒のリスクを軽減できることを, 歯科衝生士からも国民に発信することが重要と考えます.

デンタルハイジーン2019.5参照  大石